遺留分、遺留分侵害額請求権
遺言者の遺言意思が全てかなえられるわけではありません。一定の相続人には遺留分があり、遺留分を侵害されている相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することができます。遺言者の遺言意思を尊重しつつも、相続人の利益も守るために遺留分、遺留分侵害額請求は認められています。
遺留分権利者、遺留分率
遺留分権利者の範囲
遺留分を有するのは、配偶者、子(または孫)及び直系尊属(親や祖父母)。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合
直系尊属のみが相続人であるとき→3分の1
その他の場合→2分の1
例えば
- 1. 夫婦と子供が3人いて、父親が長男に全ての遺産を相続させる遺言がある場合
→妻の遺留分は、2分の1×2分の1=4分の1
長男以外の2人の子供の遺留分は、2分の1×3分の1×2分の1=12分の1 - 2. 父、母などの直系尊属のみが相続人のときに、父親に全ての遺産を相続させる遺言がある場合
→母の遺留分は、2分の1×3分の1=6分の1 - 3. 父、母などの直系尊属と配偶者が相続人のときに、父親に全ての遺産を相続させる遺言がある場合
→母の遺留分は、3分の1×2分の1×2分の1=12分の1
配偶者の遺留分は3分の2×2分の1=3分の1
遺留分侵害額請求権とは
遺言等により、遺留分が侵害されている場合に、遺留分侵害額額請求権を行使することができます。
即ち、遺留分を侵害する遺言が存在していても、そのような遺言が無効となるわけではありません。
遺留分権利者は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与、遺贈があったことを知ったときから1年以内、相続開始の時から10年以内に遺留分侵害額請求をすることができるのです。
遺留分算定の基礎となる財産
遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、算定します。
贈与財産の加算
次の贈与が加算されます。
- 1. 相続開始前1年間になした贈与
- 2. 1年以上前の贈与であっても、贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与
- 但し、新法では、相続人に対する婚姻、養子縁組、生計の資本として受けた贈与については10年としました。
この「損害を加えることを知って」というのは、客観的に遺留分権者に損害を加えるべき事実関係を知っていれば足り、遺留分権者を害する目的・意思までは必要としないとされています。
遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求の行使時期
遺留分侵害額請求は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈のあったことを知ったときから1年あるいは相続開始のときから10年以内に行わなければなりません。
遺留分侵害額請求の行使方法
相手方に対する意思表示により行います。意思表示をしたことを明確にする必要がありますので、内容証明郵便により行うのが通常です。
全体財産が不明等のために遺留分が侵害されているかどうかが明確ではなくても、期間制限があるため、遺留分侵害額請求の意思表示だけはしておいた方が良いでしょう。
遺留分侵害額請求の法律相談
遺留分侵害額請求権を行使する予定の方、行使する可能性のある方
遺留分侵害額請求権の行使には期間制限がありますので、遺留分を侵害されている可能性があるときには、早めに法律相談を受けることをお勧めします。
また、遺留分が侵害されている可能性があるときには、侵害されていることが明確になっていなくても、念のため、遺留分侵害額請求の通知を出しておいた方がよいでしょう。
法律相談に際しては、遺言書があるときには、遺言書をお持ち下さい。
遺産の中に不動産があるときには、不動産登記簿謄本もご用意下さい。
法律相談後、遺留分侵害額請求の通知を出すことになった場合、ご本人で遺留分侵害額請求の通知書を出す場合と、弁護士が代理人として行う場合があります。
遺留分侵害額請求権を行使された方
遺留分侵害額請求の通知書が届いてから法律相談をされる方は、その通知書と、遺産関係の資料(不動産登記簿謄本など)をできるだけご用意下さい。
遺留分侵害額請求をした方と話合い等をして解決する必要がありますが、弁護士が代理人として交渉することも、調停で話し合うことも可能です。
遺留分侵害額請求で弁護士に依頼
遺留分侵害額請求権を行使する場合、行使された場合、何れの場合でも、相手方との交渉等を弁護士に依頼することも可能です。親族間で直接話し合うのはためらわれる場合には、弁護士に依頼しても良いでしょう。
いずれにせよ、一度はきちんと法律相談を受けてから進めた方がよいでしょう。