遺言
遺言書を作成するときは、通常は、自筆証書遺言か、公正証書遺言の方式により作成します。以下、自筆証書遺言と公正証書遺言の違い、それぞれの作成の方法等についてご説明します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自書し(改正相続法では、目録は自書でなくても可)、これに押印する遺言です。自分自身で何時でも無料で作成できるので簡便です。
但し、自筆証書遺言の要件や訂正方法が民法で定められており、要件の一つでも欠けると効力が認められないことがあります。自分では、問題なく自筆証書遺言書を作成したと考えていても、相続発生後に効力が認められないこと、自筆証書遺言の効力を巡って相続人間の紛争が生じることもあります。また、自筆証書遺言で不利な扱いを受けたものから、その遺言書は遺言者が作成したものではない(偽造である。)と主張がされ、裁判となることもあります。
自筆証書遺言の際に気をつけなければならないこと
自書が必要であり、パソコンを使ったり、代筆ではいけません(改正相続法では、目録は自書でなくて可)。
加除、変更部分は、その場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更した箇所に押印をすることが必要です。間違えた部分を二重線で消しただけでは足りません。
記載内容が不明確であると、効力が認められないこともあります。
改ざん、紛失のおそれがあります。
相続発生後、自筆証書遺言書の保管者は遅滞なく家庭裁判所で検認の手続をしなければなりません。しかしながら、中には検認の手続が取られず、他の相続人が遺言書が存在することを知らないままでいることもあります。
公正証書遺言
公正証書遺言とは
遺言者が公証人の前で遺言の内容を述べ、公証人がそれをもとにして法律で定められた方式に従って作成する遺言です。
即ち、遺言者が作成するのではなく、公証人が作成すること、法律により方式が定められた遺言である点に特色があります。
公正証書遺言の方式
公正証書遺言の方式は、次の通り法律で定められております。
- 2人の証人の立ち会いが必要です。またこの証人は誰でも良いわけではなく、相続人となる可能性のある人(推定相続人)などはなれません。
- 遺言者が遺言の趣旨を直接口頭で口述します。ただ、実際には、事前に公正証書の文案を作成し、当日公証人が確認します。
- 公証人が遺言者の口述を筆記し(実際には事前に作成されています)、これを遺言者、証人に読み聞かせます。
- その後、各自が署名、押印します。但し、遺言者が署名できない事情があるときには、公証人がその理由を記載して署名、押印することによって遺言者の自書に代えることもできます。
- このような方式に従って公正証書遺言書が作成されたことを公証人が記載して署名、押印します。
- 通常は公証役場で作成しますが、遺言者が病気などで公証役場に行けないときには、公証人に出張して来ていただくことも可能です。
公正証書遺言を作成するときの手順
では、公正証書遺言を作成したいときには、具体的にはどのようにして作成したら良いのでしょうか。
- 1. まず、どのような遺言書を作成するかを考えます。
→ 遺言書作成の目的を参考にして下さい。
弁護士に依頼する場合には、弁護士が、遺言書を作成する方から、家族構成、家族の状況、遺産の内容、お気持ち等をおうかがいし、どのような遺言書を作成したら良いかを一緒に考え、遺言書の原案を作成して、公証人と打ち合わせを行います。 この流れについては→遺言書作成の法律相談から作成まで - 2. 公証人に作りたい遺言書の概要を伝えます。
- 3. 公正証書遺言を作成する日取りを決めます。
- 4. 遺言者が証人とともに公証役場に行きます(これが難しいときには、遺言者の自宅や病院まで公証人に出張いただくことも可能です。但し、そのための日当が発生します。)
- 5. 公証役場において、前記の方式に従い、公正証書遺言が作成されます。
公正証書遺言にはどのような利点があるのでしょうか
公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べ、準備が必要で費用もかかります(相続財産の内容等により費用が異なります。)が、次のような利点があります。
- 公証人は法律の専門家であり、公正証書遺言は公証人が作成するものであるため、記載内容が不明確であるとして無効になるリスクが低いです。
- 公証人役場で保管されるので紛失する危険性がありません。
- 相続発生後、自筆証書遺言書のように検認の手続を取ることが必要ありません。
- 相続人は、公証役場で公正証書遺言書が作成されているかを確認することもできます。
折角遺言書を作成したのに、効力に問題が生じたり、効力を巡って相続人間で争いが生じたりしたのでは後で大変ですので、費用と準備の手間はかかりますが、公正証書遺言を作成することをお勧めします。
遺言書は何回でも作り直すことができます
遺言書は何回でも作り直すことができます。また、複数の遺言書があり、その内容に矛盾がある場合には、後の遺言書により矛盾する部分が取り消されたことになります。
遺言能力
遺言を作成するためには、遺言を作成することができるだけの判断能力が必要です。年齢的には、15歳以上であれば作成できますが(民法第961条)、認知症などにより判断能力が失われていた場合には、遺言書も無効となってしまいます。
高齢の方が遺言をする場合には、後で、作成時に遺言能力があったか否かが問題となることが少なくありません。そこで、高齢の方が遺言をする場合には、作成の直前に医師から判断能力があることを確認できる書面をもらってから作成するのも一つの方法です。
遺言書作成に関する法律相談
遺言書の内容が複雑な場合には、弁護士に相談しながら遺言の内容を決めていくのが良いでしょう。
遺言書の作成をお考えの方の法律相談を随時受け付けておりますので、ご検討中の方はお気軽にお問合せ下さい。